ゴールデンクロスとデッドクロスは、短い期間と長い期間の平均が入れ替わった印です。上昇や下落を考える材料になりますが、交差した後の利益を約束する印ではありません。平均の作り方、交差が遅れて現れる理由、反対に動いたときの損失を一組にすると、名前の強そうな響きに引っ張られずに読めます。
移動平均線は、最近の価格をならした線
は、一定期間の価格の平均を、時点をずらしながら計算してつないだ線です。この記事では、各期間の最後の価格である終値を同じ重みで使う「単純移動平均」を扱います。最近の3本なら3本平均、最近の7本なら7本平均です。
例えば終値が149円、150円、151円の3本なら、平均は450円÷3=150円です。次が152円なら、最も古い149円を外し、150円、151円、152円を使います。平均は151円になります。新しい数字が入るたび、使う範囲も一つずつ進むので「移動」と呼びます。
たとえるなら、毎日の体重と一週間の平均体重を見比べる記録です。一日だけ増えたのか、しばらく増え続けているのかを整理できます。ただし、平均を出したから明日の体重が分かるわけではありません。価格の平均も、これまでの動きを見やすくした情報です。
短い期間の線は、新しい価格の影響を受けやすく、細かく動きます。長い期間の線は、多くの価格をならすため、ゆっくり変わります。「短期」と「長期」は二本の比較です。日足の5本と25本、1時間足の5本と25本では、見ている実際の時間が違います。
下から上ならゴールデン、上から下ならデッド
短期線が長期線を下から上へ抜ける交差を、上から下へ抜ける交差をと呼びます。前者は上昇を、後者は下落を考える手掛かりとして使われます。上下にある状態だけでなく、「前と今で位置関係が入れ替わったか」を見ます。

図1:独自に作った架空の1時間足の終値。黄色は3本平均、紫は7本平均です。各時点までの価格だけで計算し、未来の価格は使っていません。
楽天銀行が公開するMARKET SPEED FXのヘルプも、終値の平均を線にする仕組みと、二本の線が交差する向きを説明しています。画面の初期設定として日足で5日、25日、75日の線が示されていますが、初期設定は最も利益が出る設定の証明ではありません。公式ヘルプ
図1で3本と7本を使ったのは、仕組みを少ない本数で見せるためです。この組み合わせを売買の正解として勧めるものではありません。期間を変えると、同じ価格でも線の形、交差の場所、回数が変わります。うまく見える交差が出るまで設定を選び直すと、比較の基準がなくなります。
クロスは、価格が動いた後に現れる
平均は、すでに付いた価格から作ります。価格が底から上がり始めても、長期線に古い高値が残れば、短期線が上へ抜けるまで時間がかかります。チャートの最安値で必ず買える仕組みではありません。交差を待っている間に、価格がかなり上がっている場合もあります。
逆に、横ばいの中で少し上下するだけでも、二本の線が何度も交差します。買った後にすぐ下へ交差し、売った後にまた上へ交差することもあります。こうした、期待した方向の動きが続かない例を「だまし」と呼ぶことがあります。道具がうそをついたのではなく、平均の位置が変わった後も価格が動き続けた結果です。
OANDA証券の公式解説も、長期線が横ばいの場面では交差後の動きが続かない例を示しています。長期線の傾きを一緒に見る考え方が紹介されていますが、それで失敗がなくなるとは言えません。確認を増やせば、入る時点がさらに遅れる面もあります。二本の移動平均線の解説
同じ入口から、利益と損失の両方を計算する
ここでは自己資金10万円、1,000ドルの架空取引を考えます。1時間足で上への交差を確認した後、150.20円で買い、同じ日中に終了する設定です。150.70円で売れれば、0.50円×1,000ドル=500円の利益です。一方、150.00円まで下がって売れば、0.20円×1,000ドル=200円の損失になります。
売買一組の費用を仮に20円とし、価格差から別に引くと、残る利益は480円、最終損失は220円です。税金、別途手数料、金利差の調整額は含めません。実際の買値と売値を使うときは、その中のをもう一度引かないようにします。予定した価格で取引できる保証もありません。

図2:同じ入口から分かれる二つの架空経路。費用を各20円として別に控除。図の交差や価格は実績ではなく、勝ち負けの確率も示しません。
この取引の金額は150.20円×1,000ドル=15万200円です。自己資金10万円に対して約1.50倍を動かします。平均線の期間を変えても、この数量なら0.10円の動きは100円の増減です。「交差がきれいだから数量を増やす」と決めず、反対へ動いた場合の円額から考えます。
また、費用後480円の勝ちが1回、220円の負けが3回なら、合計は180円の損失です。一回の利益が一回の損失より大きくても、それだけでは合計が増えると決まりません。何回入るか、どこで終えるか、費用がどれほどかまで同じ条件で記録する必要があります。
実際のケース:交差を知らせる道具も、見送り条件を置く
OANDA証券は、短期と長期の移動平均線が交差すると矢印を表示する独自の道具を公式に説明しています。その記事では、線の種類や期間を変えられることに加え、長期線の傾きと矢印の方向が合わない場面などでは取引を見送る考え方が紹介されています。公式の道具の説明
これは実在する道具と、その使い方の一例です。同社の利用者がどの期間に何円得たかという資料ではありません。この記事の図1の設定や図2の損益も、同社の実績ではありません。参考になるのは、目立つ矢印が出ても、その先に取引するかを考える条件がある点です。
練習では、交差した時点より右を隠して判断します。後の上昇を見てから「この交差は分かりやすい」と選ぶと、失敗する交差を省いてしまいます。通貨ペア、時間足、平均の期間、終了条件を固定し、入る例と見送る例を同じ表へ残すと、判断のずれに気づきやすくなります。
記録には、判断した時刻も入れます。まだ完成していない右端の足を使うと、価格が動いて交差が消える場合があります。確定した足で判断する練習なら、終わった時点の平均を使い、その後に注文する設定でそろえます。終値が確定する前に、その終値を知って買えたことにはしません。
また、短期線が上にあるだけの日と、下から上へ入れ替わった日を分けて数えます。状態と変化を区別すると、同じ交差を何度も数える間違いを防げます。
まとめ:交差の名前より、計算と取り消す条件
二つのクロスは、短期と長期の平均の位置が入れ替わる現象です。過去の価格から作るので遅れがあり、横ばいでは交差が続くこともあります。利益の候補を探すときは、平均の期間、数量、費用、反対へ動いた場合の終了条件まで一緒に決めましょう。
次は、十個の交差を同じ条件で観察する
一つの通貨ペアと時間足を選び、同じ設定で交差を十個探します。上昇した例も戻った例も記録し、十個だけで有効性を証明したとは考えずに練習してください。で注文も試し、比較ページでは平均線の設定、費用、最小数量を確かめましょう。