**米国の雇用統計は、仕事の数と人の割合を一つにしないほど読みやすくなります。**雇用が増えてもが上がる場合があり、失業率が下がっても働く人が増えたとは限りません。数字が矛盾したように見えるときほど、何を分母にしているかを確かめましょう。

増えた人数ではなく、増減の差を読む

ニュースの「」は、米国の事業所調査から生まれます。英語の略でNFPと呼ばれ、農業や自営業などを除いた、給与が支払われる仕事を数えます。通常注目されるのは、前月からの増減です。

架空の地域で、ある月に6万件の仕事が増え、4万件がなくなれば、差し引きの増加は2万件です。「2万増えた」は、新しくできた仕事が2万件しかなかったという意味ではありません。増えた動きと減った動きの合計結果です。

架空の仕事の新規増加6万件から減少4万件を差し引くと、前月より2万件増加。

図1:架空の仕事の増減。新規6万件と減少4万件を差し引くと2万件の増加です。

企業の給与台帳から見た仕事の数と、実際に働く人の人数も同じではありません。一人が二つの対象になる仕事を持てば、事業所側では二つに数えられます。仕事の増加を、そのまま新しい就業者の実人数へ置き換えないようにします。

失業率の分母は、仕事をする人と探す人

失業率などは、別の家計調査から計算します。失業者は、仕事がなく、仕事を探していて働ける人などです。働いている人と失業者を合わせた「労働力人口」が分母になります。全国民で割る数字ではありません。

架空の町で、働く人192人、失業者8人なら、労働力人口200人で失業率4%です。翌月、もともと仕事を探していなかった20人が仕事探しを始め、全員が働き始めれば、働く人212人、失業者8人、労働力人口220人になります。

失業者は8人のままでも、失業率は8÷220で約3.64%へ下がります。率だけを見ると失業者が減ったように感じても、ここでは分母が増えただけです。人数と割合を両方見る理由が分かります。

架空の失業者は8人で変わらず、就業者が192人から212人へ増えると、失業率は4%から約3.64%に下がる。

図2:架空の町。失業者8人が変わらなくても、労働力人口が200人から220人へ増えると失業率は下がります。

逆に、新しく仕事を探す人が多く、すぐ仕事が見つからなければ、雇用と失業者が一緒に増える場合もあります。仕事探しをやめた人が増えて失業率が下がる場合もあり、低下だけで状況が良くなったと断定できません。

二つの調査は、同じ数字へ必ずそろわない

事業所調査は給与の支払われる仕事を、家計調査は人の働き方を調べます。自営業を含むか、複数の仕事をどう数えるか、休業をどう扱うかなどが異なります。調べる対象期間も完全に同じではありません。

たとえるなら、駐輪場の契約数と自転車に乗る人数を比べるようなものです。一人で二か所契約する人も、契約せず自宅に置く人もいます。二つの数字がずれたら、まず対象の違いを確認する方が、「どちらかがうそ」と決めるより役に立ちます。

統計は全員を毎月一人ずつ確認するものではなく、調査から全体を推計します。そのため小さな月ごとの違いを、大きな社会の変化と即断しない姿勢も大切です。同じ定義の数字を、複数の月で見る練習をしましょう。

時給が上がっても、週の金額は減るかもしれない

架空の労働者が時給25ドルで週40時間働けば千ドルです。時給が26ドルになっても、週37時間なら962ドル。時給は4%増ですが、週の単純な金額は3.8%減ります。税金や残業などを除いた説明用の計算です。

公式の平均時給も、同じ全員がその割合で賃上げされたという意味ではありません。高時給の仕事と低時給の仕事の割合が変われば、平均は動きます。平均時給、働く時間、仕事の数を同じ表で確認すると、見出しだけでは分からない点が見えます。

賃金は物価との関係もあります。名目の時給が上がっても、生活費がそれ以上に上がれば、買う力が増えるとは限りません。雇用統計一枚だけですべてを判定しようとせず、必要に応じて物価の資料も開きます。

実際のケース:2024年1月の発表は改定も大きかった

BLSは2024年2月2日、2024年1月の非農業部門の仕事の増加を35万3千、失業率を3.7%で変わらずと発表しました。同じ資料に、平均時給と労働時間も掲載されています。見出しの二つの数字は、違う調査の違う単位です。

この日、2023年12月の増加は21万6千から33万3千へされました。差は11万7千です。古い発表と今月の見出しをそのまま並べると、この更新を見落とします。BLSは追加回答や季節要因の更新、年ごとの照合などを説明しています。

この数字は当時公表された版の例であり、後に更新された現在の系列ではありません。過去の取引を振り返るなら、その時点でどの数字が利用できたかを確認します。後の改定を知ってから「当然そう動くはずだった」と考えるのは公平な検証になりません。

BLSの二つの調査の比較資料では、仕事と人の違いを直接確認できます。統計を読む力は、速く強弱を付けることだけではありません。一見食い違う数字を、定義に戻って説明できることも大事です。

発表前後の注文は、数字とは別の難しさがある

雇用の強さは、景気、物価、金利の見方に関係します。予想より強いかどうかを言うには、事前に存在した予想の集計元と時点が必要です。未確認の予想を後から入れて、ドル高・株安の原因を一本に決めないようにします。

発表直後にはが広がり、が起こる場合があります。チャートに見える動きの全幅を取れたとする計算は、成立条件を無視しています。正しく読んでも損失が出ることを、取引の数量と一緒に考えます。

前月と比べる前に、同じ単位へ直す

海外の表で353 thousandとあれば、353人ではなく35万3千です。増加幅が万人で示される画面と千人で示される画面を比較するときは、単位をそろえます。小数の点を一つ読み違えるだけで、印象が大きく変わってしまいます。

「就業者の人数」「仕事の数」「その前月差」「失業率」を、それぞれ別の列にします。仕事の総数が大きいことと、今月の増加幅が大きいことも別です。水槽の水の量と、今月足した水の量を分けるように考えると、混ぜにくくなります。

最初の記録では、一回分の見出しを自分の言葉で説明できれば十分です。分からない項目を全部強い・弱いへ振り分けず、どの定義が不明かを書きます。家計調査と事業所調査の違いへ戻れることが、次の月を読む土台になります。

まとめ:増減、人数、割合を一段ずつ読む

非農業部門の増減は仕事の差し引き、失業率は家計調査の労働力人口を土台にした割合です。時給と労働時間、改定も別の情報です。数字の高低を合否にせず、何が変わってその値になったかを説明できることを目標にしましょう。

次は、見出しの横に分母と版を書こう

公式発表から仕事の増減、失業率、労働時間、過去の改定を写します。口座がある人は発表時刻とニュースの更新時刻を見比べてください。初めは取引せず、後で読み直せる記録を残すだけで十分です。

口座を選ぶなら、口座の比較で指標の詳しさ、履歴、デモでの注文練習を比べましょう。投資では損失が出ます。FXには預けたお金を超える損失もあるため、発表の速さより、定義と取引条件を確かめる順番を優先してください。