FXで相場が大きく動けば、方向が合った取引には大きな利益の機会が生まれます。同時に、逆向きの取引では損失も大きくなります。1992年のポンド危機から学べるのは、「有名な出来事を知れば勝てる」ではなく、国が守ろうとする相場の仕組みも変わること、利益と損失を取引量から計算できるようにすることです。

大きなニュースが、通貨を買う理由を変える

FXは、二つの通貨を交換する値段の変化を使う取引です。円でドルを買った後にドルが高くなれば、円に戻したときの差額が利益になります。売りから始めて、安くなってから買い戻す取引もできます。ただし、金利差による受け払い、売買の費用、税金も最終的な結果に関係します。

通貨の値段には、景気、、国の政策などが関わります。例えば、通行できる橋のルールが変われば、人の流れも変わるでしょう。相場でも、これまでの前提が変わる発表があると、同じ通貨でも売りたい人と買いたい人の判断が変わります。その結果、値段が短時間に大きく動くことがあります。

ここでいう「大きく動く」は、すべての人に大きな利益が出るという意味ではありません。買っていたか、売っていたか、どの値段で取引できたかで結果は変わります。同じニュースを読んでも、取引の条件まで同じにはならない点を押さえておきましょう。

実際のケース:1992年、英国は相場の枠を離れた

当時、欧州には、参加国の通貨の交換レートを決めた範囲に収めるERMという仕組みがありました。英国は1990年に参加しています。英国の通貨ポンドにも、守るべき値段の範囲がありました。自由に動く相場に、国どうしで作った柵を置いている、と考えるとイメージしやすくなります。

イングランド銀行の当時の報告によれば、1992年9月16日、相場が激しく動くなか、当局が大量のポンドを買った後に、英国はポンドのERM参加を停止しました。同行の歴史解説も、金利引き上げや相場への働きかけではポンドを範囲の下限から押し上げられず、離脱したと説明しています。

1992年の英国ERM参加停止と2015年のスイスの最低為替レート撤廃を並べた年表 図1:中央銀行の一次資料で確認できる制度変更。株価・為替の実際の推移や、誰かの売買の成績を描いた図ではありません。

背景には、景気や金利をめぐる国ごとの事情の違いがありました。当時の英中銀報告は、英国の景気回復が弱い一方、ドイツでは金利を下げにくく、英国もポンドを守るために金利を下げる余地を制限されていたと説明しています。チャートの線だけでなく、線を動かす政策の条件を読むことに意味がある事例です。

後から見ると「売ればよかった」と感じるかもしれません。しかし、当日の途中で政策がどう変わり、どの値段でできるかは、先に確定していたわけではありません。記事の歴史説明と、その場で実行できる売買の判断は別です。歴史を読むときは、結果が分かった後の説明と、その時点で分かった情報を分けてみましょう。

まずは一円の値動きを、お金に直そう

練習として、1ドル150円で1万ドルを買ったとします。取引全体の金額は150万円です。151円で売れれば、差は一ドル当たり1円。1円×1万ドルで1万円の利益です。149円なら、同じ計算で1万円の損失になります。これはドル円を使う仮の例で、1992年のポンド相場を再現したものではありません。

一万ドルの買い取引で決済価格が変わった場合の損益 図2:150円で1万ドルを買う仮定。145円なら5万円の損失、155円なら5万円の利益です。費用・金利差・税は除き、希望の価格で売れたものとして計算しています。

ここで口座に入れたお金が10万円なら、取引額150万円はその15倍です。預けた資金に対して大きな金額を動かす仕組みをといいます。利益1万円は、150万円の取引全体に対しては約0.67%ですが、10万円に対しては10%。損失1万円も、口座のお金の10%に当たります。

相場が5円動けば損益は5万円で、10万円の半分です。口座にある金額だけを見て「小さな取引」と判断せず、何ドル持つかまで確認しましょう。なお、10万円という例は必要資金の推奨ではありません。必要なや決済条件は業者によって確認が必要で、相場の動きによって取引を続けられなくなることもあります。

もう一つの実例:2015年、スイスも前提を変えた

スイス国立銀行の2015年1月15日発表は、1ユーロ=1.20スイスフランの最低為替レートを撤廃するとしました。同年4月の総裁講演では、ユーロ安が続き、維持のための通貨売買を急増させる必要があったと説明しています。

英国とスイスでは、時代も政策も同じではありません。共通して学べるのは「中央銀行が守ると言っていた水準」も、永久に動かない線ではないことです。過去に同じ場所で何度も反発していたとしても、その理由だった制度が変われば、以前のチャートだけでは説明できなくなります。

決めた損失で必ず止まるとは限らない

は、損失を広げないために取引を終えることです。「149円になったら売る」と注文していても、相場が急に飛んだり、取引相手が少なくなったりすると、149円で売れるとは限りません。金融庁も、相場急変時には希望の価格で取引できず、預けた証拠金を超える損失が生じるおそれがあると説明しています。

それでも、あらかじめ考える意味はあります。例えば、仮に許容できる損失が1,000円で、逆方向へ1円動く場面を練習するなら、1,000通貨が計算の出発点です。1,000円÷1円=1,000通貨。ただし費用や価格のずれを含まないので、実際の損失の上限にはなりません。小さな数量から仕組みを確かめるための計算です。

チャンスを調べるなら、予想を二つ書いてみる

大きな発表がある日は、「こうなれば買われそう」と考えたら、「反対ならどうなるか」も書きます。例えば、金利が上がる予想だけでなく、上がらなかった場合も考えるのです。結果の当たり外れと、その理由を分けて残すと、ニュースと値動きのつながりを後から見直せます。

記録には、発表前に考えた理由、想定した数量、逆に動いたときの金額を書きましょう。取引をしなかった日でも、学びは残せます。動きが速くて数量や注文を確認できないなら、今回は見るだけにする判断もできます。「毎回参加する」より、「条件を理解できる場面を選ぶ」と考えると、次に調べることが明確になります。

まとめ:大変動のチャンスは、金額と条件まで読む

1992年の英国、2015年のスイスでは、相場を支える制度の前提が変わりました。値動きが大きければ利益の幅も広がりますが、逆に動くと損失も増えます。ニュースの理由、取引量、一円当たりの損益、注文どおりに取引できない場面を合わせて考えると、大きな出来事を自分の学習材料にできます。

次は、ニュース一つと仮の取引量で練習しよう

中央銀行の発表日を一つ選び、「何が変わったか」を一文で書きます。次に1,000通貨と1万通貨で、1円逆に動いた損失を紙やデモ口座で比べてください。自分の口座では最低取引量と損失時の仕組みを確認できます。口座比較も使い、取引量、費用、注文の機能を理解してから、実際に取引するかを考えましょう。